パリで訪問した2つ目の特別展は、ルイ・ヴィトン財団で行われた「シュチョーキン・コレクション」(Icôns de l’art moderne. La collection Chtchoukine)。バウハウスと同時代の芸術作品が盛り沢山。予約必須の特別展でした。
ブローニュの森にあるルイ・ヴィトン財団
ブローニュの森に斬新なデザインであるこのルイ・ヴィトン財団が完成したのは2014年10月のことですからまだ比較的新しい名所です。設計者はアメリカ人建築家「フランク・ゲーリー(Frank Gehry)」です。
このルイ・ヴィトン財団は基本的には現代美術を中心とした催しを都度行っているようです。常設展があるわけでもなさそうでした。日本で言うと六本木の新国立美術館のような感じでしょうか。
シュチョーキンコレクションとは
シュチョーキンコレクションといえば美術好きならなんとなく一度くらいは聞いたことがあるコレクターかと思います。古今東西数多くのパトロン、コレクターがいましたが、そのなかでも特段注目されるコレクターといえるでしょう。
そのコレクションは19世紀の終わりから20世紀にかけて、モネ、ドガ、セザンヌ、ゴーギャン、ピカソ、マティスといった印象派、ポスト印象派、モダン派の主要作品を網羅しているとかその質が半端ではありません。
彼は1898年ころからパリで、画商ポール・デュラン-ルーエルから大量のモネの作品を購入したの皮切りに、その後、画商ボラールからセザンヌ、ゴーギャン、マティス、ピカソの絵を購入しました。
さて、彼のコレクションはロシア革命の影響でしょうか、1918年に国有化され、国立の現代西洋美術館(彼のコレクションを所蔵するために造られたもの)を経て、戦後にスターリンの命令のもと、モスクワのプーシキン美術館やサンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館が分割して所有されることになりました。
今回の特別展のために、これらの美術館から選りすぐりの傑作を借りてきて展示していました。今回の展示作品数は130展近くに及ぶそうで、これだけ多くの印象派、ポスト印象派、モダン派の主要作品が勢揃いする展覧会を、ルイ・ヴィトン財団で開催するのははじめてのことだそうです。
僕はエルミタージュ美術館には行ったことがあるので、今回の特別展のなかで見おぼえのある絵が幾つかありました。一方プーシキン美術館には言ったことがないので、例えば以下のようなモネの作品や
あるいはピカソの作品などは見た記憶がなかったです。
この2つの作品、特に僕の目に止まったものなのですが、やはりこれまで見たことがなかったようです。ここで初めて見れたのは嬉しい限りです。でもプーシキンにはいつか行かないといけないな。
なお、この特別展には、その他にもニューヨークのMOMAやパリのポンピドゥーセンター所蔵のものも展示してありました。これもシュチョーキンのコレクションなのでしょうか。
特別展とは思えないくらいの展示品の多さ
このフォンダシオン・ルイ・ヴィトン、内部はかなり広かったです。しかし、この特別展では、その施設のほとんどを使っていました。フォンダシオン・ルイ・ヴィトンのレイアウトはご覧の通り。
ちなみにこの特別展、地下1階から地上0階-地上2階にわたってくまなく絵が展示してありました。ということで、ものすごい作品の数に驚かされました。
基本的に彼のコレクションは彼のお屋敷にひしめくように並べられていたそうです。そのなかにマティスの部屋というものがあったのですが、マティスの絵そのものがまるで部屋の装飾の役割を果たすかのように用いられていたとか。お金持ちの道楽すげえ…。さすがにこの特別展ではそこまで隙間なく並べてはいなかったですが、かつてあったそれぞれの部屋を再現するかのように絵が展示してありました。
こうした部屋はいくつかあったようです。他にはピカソの間なども。この部屋には主にキュビスムの作品が多く揃っていたそうです。
ピカソがキュビスムに目覚め、そしてアフリカ彫刻展に感化され大きくその作風が変化し始めたのは1912年頃であり、まさにこのシュチョーキンがパトロンとなっていた頃になります。シュチョーキンは当時としては早い段階からピカソの先進的な試みを理解していた数少ない人物だったのです。だからこそ、後世誰にも真似できない普遍的なコレクターとして君臨し続けているのでしょう。
特別展のパンフレットがすごい
それにしても会場で貰った特別展のパンフレットの充実ぶりにも驚きました。
全体的にヨーロッパの特別展では、パネルなどを利用して解説をしっかりしていることが多いのですが、正直、これをその場で読み理解するのは、少しはフランス語が読めるようになったとは言え難しいです。ちなみに英語もありますが、美術館鑑賞はただでさえ疲れるので、仮に日本語で説明が書いてあったとしてもしっかりと読むのは大変だと思います。
ということで、最近では必ずパンフレットの解説、それでは不十分な場合はミュージアムショップで関連書籍を購入することもあるのですが、今回の特別展、無料でいただいたこのパンフレットがあまりにボリュームがあるため、その必要はありませんでした。
このようにフロア、部屋ごとの解説がとても丁寧です。おそらく会場の壁に書かれていた文章をほぼそのまま掲載しているようでした。かつてここまで丁寧な無料でもらえるパンフレットを見たことがありません。
入場するには予約が必須でした
ところで、このシュトーキン・コレクション、もちろん人気のフォンダシオン・ルイ・ヴィトンで行われているのもそうですが、良質のコレクションが集結していることもあり、大変人気のある特別展のようです。夕方にも関わらず確かに多くの人で賑わっていました。フォンダシオン・ルイ・ヴィトン自体も人気があることも原因なのでしょう。
実は最初はこの特別展に入るために予約が必要であるということを知りませんでした。しかし、偶然出発前夜に、自宅で妻にフォンダシオン・ルイ・ヴィトン行くよーという話をしていて、ウェブサイトを確認したときにそのことを知りました。危なかったです。
ということで予約は公式のウェブサイトから行うのですが、これが意外と厄介でした。
まず名前や予約した日時を入力するのはいいのですが、さらに住所や携帯番号を入力しなければいけませんが、いずれもフランス国内のものでなければなりません。住所なんかJaponが選べるのに…しかし、住所については例えば宿泊予定のホテルの住所で問題ないのですが、電話番号はどうやら固定電話のものではダメのようです。
しかし僕は幸いなことにこの夏フランスもフランスに行っていて、その際に音声通話可能なプリペイドSIMを購入していたので、その番号を入力してみたところOKでした。
それにしても、フォンダシオン・ルイ・ヴィトンのウェブサイト、イケてなさすぎです。旅行者ってフランスの携帯の番号って普通は持っていないですよね。どうしろっていうのよ…。あとで改善した方がいいって意見をメールしようかと思います。フランス語の勉強も兼ねてフランス語でメールしたいと思います。添削とか有料でお願いしようかな。
いずれにしても、予約には苦労したものの、無事にどうにか滞在中の日時を取ることができました。
なお、予約後にこのようなpdfが発行されますのでこれを印刷、もしくはスマホに保存して、当日現地で提示できるようにしておきましょう。僕は出発までに印刷が間に合わなかったので、iPhoneに保存(Good Reader)しておきました。
注目度も高いせいなのでしょうか、なにならメディア取材も行われていたそうです。
1ユーロバスが凱旋門側から出ています
ところで、フォンダシオン・ルイ・ヴィトンがあるブローニュの森は、パリの中心からは少し離れたところにあります。地下鉄でも行くことができるのですが、地下鉄の駅からこの財団の建物があるところまでは徒歩20分くらいしますので、凱旋門側から出ているバスを使うと便利です。
具体的な地図は予約終了後に発行されたpdfにも印刷されています。
このバス、小さな電気で動くマイクロバスとなっています。20分おきに出ているので比較的便利ですが、とても小さいので1台あたりに乗れる人がとても限られます。僕が行ったときは夕暮れ後だったのですが、この日は夜8時まで開館していたこともあり、思った以上に利用客が多かったです。少し早めに所定のバス停に向かったほうがいいでしょう。
なお、帰りは大変混んでいたので、地下鉄の駅まで歩きました。ただし先程も申し上げたとおりこの財団から地下鉄夜になると方角もわかりづらくかつブローニュの森はあまり治安もよくなさそうな雰囲気なので、スマホなどでしっかり位置確認するなどして迷わないようにした方がいいと思います。
庭園は夕暮れを過ぎていたので見られませんでした
今回は予約時間が夕方6時、現地には予約時間1時間前についていましたにも関わらず日没後だったため、庭園には入ることができませんでした。こちらは、この時は予約なく入れそうでしたが、バカンスシーズンなどは混むかもしれませんので、予約しておいたほうが無難かもしれません。
庭園側は次回以降のパリ訪問時に訪れてみたいと思います。おそらく来年夏か秋になるかと思います。