2017年4月 スペイン西部とポルトガルの旅 第3部:世界遺産編No.17 -水銀の遺産アルマデン

2017年4月 スペイン西部とポルトガルの旅
2017年4月 スペイン西部とポルトガルの旅

訪問日時:2017年5月4日、午前11時頃

行きづらくて地味だけどとっても面白かった世界遺産の一つでした。

さらに陸の孤島へ

残念だった宗教的モニュメント、グアダルーペから1時間54分かかったでしょうか。ん?時間が正確、それは今更ながらGoogle Mapsのタイムラインという機能を思い出したからです。これをもっと前から用いていればより正確な行程がわかったのに。

近現代の産業関連の世界遺産へ

ヨーロッパの世界遺産というと、まっさきに思いつくのが、大聖堂といった中世の教会建築やバロック時代の宮殿や街並みなどを思い浮かべますが、実はいろいろ調べてみると近現代の産業に関する資産が意外と多いことに気がつきます。今回訪問した「アルマデン」というスペイン中部にある小さな街ですが、ここにはかつてスペイン有数の水銀鉱山がある街として発展してきました。

常温で液体である大変希少価値のある金属である水銀、この水銀が採掘することができる鉱脈は、世界の中でも大変限られていました。その中で、当時世界最大の採掘量を誇っていたのが、スペインのアルマデン、そして、それに続くスロベニアのイドリアでした。なお、同時代、すなわち16世紀頃では、ヨーロッパ以外においては、エジプト、中東、インドそして日本などが水銀を産出していたことで知られています。

さて、当時、スペインは、ラテンアメリカから大量の銀の鉱石を採掘していましたが、1550年代に水銀のアマルガムを利用したパティオ精錬法が導入されはじめると、急速に水銀の需要が高くなりました。このような背景もあり、アルマデンやイドリアが急激に注目され発展していきました。

しかし、20世紀になると、日本における水俣病(※アルマデンの博物館でもこのことに触れていました)水銀は人体に有害であるという理由から、その工業的な重要性は大きく低下していきました。それでも2003年まではアルマデンの鉱山は現役だったようです。

その後は、この水銀鉱山で栄えた街を歴史的資産として残し後世に伝えていこうという流れが加速し、2012年にユネスコ世界遺産に選定されるに至ったというわけです。

なお、かなり陸の孤島ということもあり、かつ近代産業関連の遺産ということもあって、正直なところ観光オフシーズンとはいえどもほとんど観光客はいませんでした。我々入れて2組くらいでしたでしょうか。

よく見ると、トレド、コルドバ、メリダのいずれからも離れている…。こりゃ確かに行きづらい。

鉱山ツアーは見学できず

ということで、陸の孤島であること、そして産業遺産は地味ということもあってか、アルマデンに関する情報は日本語ではほとんどありませんでした。ネットで調べても正直スペイン語の公式サイトがある程度。ここはとりあえず現地へ行って体当たり的に観光する他にありません。まあこれも旅の醍醐味。

アルマデンまでの道のりは至って順調でしたが、正直普通の街過ぎて一体どこで観光できるのかが全くわかりませんでした。しかし、街中の案内板(Mining Parkはこちら)みたいなものを頼りにさまようこと10分弱、街郊外にその名の通りのマイニングパークを発見。ここがかつて鉱山道への入り口だったようです。その入口にはこのような門が。歴史的資産のようでした。

そして例のマイニングパークへと到着。観光バスが1台ほど、一般車は我々だけでした。本当に観光しているのか。

しかし、建物の中に入ってみると思った以上に立派でそして新しかったです。係のおばちゃんがいたので、見学したい旨を伝えましたが、午前は終わってしまったからダメって言われてしまいました。

どうやらこの施設は、鉱山ツアーでのみ見学できるそうで、団体であれば遅くとも前日までに予約が必要。個人であれば午前、午後のツアー開始前までに現地に行けばOKのようです。我々は非常にタイミングが悪く午前10時からのツアーに間に合わず、次は午後2時からということで、そこまで待つことは出来ず泣く泣く諦めることにしました。スペイン旅行はやはり10時前には現地についておきたいところです。

あくまでもパンフレット情報ですが、鉱山ツアーは、各種施設跡、地下50メートルにある16世紀から17世紀ころに掘られていた水銀鉱脈跡の見学を中心に、およそ2時間半から4時間かけて行うという結構ボリュームたっぷりのものみたいです。

中には入れませんでしたが、外からはこの程度なら見ることができました。雰囲気だけを味わっておきました。

ただ、この街に滞在してもあまりレストラン・ホテル等がなさそうだったので、面白くないかも。

元病院施設「サン・ラファエル病院」にある博物館は見学できました

こうした水銀を通した街の発展は、例えば、銀取引を通して、経済的な発展、経済学的な発展にも貢献したり、あるいは、炭鉱技術の改善などを通して、科学、医学、工学への発展に貢献したということです。当時アルマデンには、ヨーロッパのいろいろな国から多くの研究者がこの地を訪れ研究をしたということです。アルマデンで研究され発展したこうした知識や技術は、他の地域などにも伝えられたということです。

なかでも健康面、医療面に関しての研究やケアは、アルマデン市内にある「サン・ラファエル病院」が中心となって行っていました。炭鉱夫の健康的側面、精神的側面をケアすることは、この街では最も重要な課題でした。この病院施設を通して、炭鉱の経営者層、炭鉱夫、そして医者などが密なコミュニケーションを取ることが出来たことも、この街の発展に貢献したということです。

さて、その「サン・ラファエル病院」は現存しており、現在ここはアルマデンの歴史に関しての展示が豊富である博物館となっています。ここは開いていましたので、我々は見学することができました。

元病院施設の博物館そばには無料で路上駐車できましたので、困ることはまったくないと思います。

観光業に力を入れていこうという意気込みを強く感じました

正直地味だし陸の孤島で訪れづらい観光地であることには間違いありませんが、しかし、観光施設は充実していますし、最近世界遺産に選出されたこともあって、どれもきれいで充実していると思いました。また、係の人こそ英語はほとんど通じませんでしたが、とても親切で好感が持てました。それでも展示資料の説明にはスペイン語と英語も併記されていて、また、博物館では英語に翻訳したA4の印刷物(あとで回収)を受付でいただくことができましたので、スペイン語がわからなくても十分に観光できると思います。

本当に小さな地方都市で今ではこれといった産業もなさそう。したがって観光業をもっと活発にしていきたい、そんな町の人達の思いを強く感じました。おそらく世界遺産にも選ばれているので、自治体等の支援もあるのでしょう。

また、同時に世界遺産に選ばれたスロベニアのイドリアとも連携を維持して、様々な観光誘致に関するイベントを催したりしているようです。複数の国にまたがった世界遺産というのもまた面白いですよね。最近では例えば「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献」なども複数の国にまたがった面白い世界遺産だと思います。

僕がこの街に貢献するならば、やはり情報発信でしょうね。まず自分のブログで紹介して、そして、トリップアドバイザーにもレビューを投稿する。これですね。

長い第3部世界遺産編もいよいよ次が最後です。(続く)

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