訪問日時:2018年5月6日、午前11時頃
短い滞在時間ではありながら、美術館巡りも大充実の旅でした。
ヨーロッパへの関心は美術から
確かに旅行の大半はヨーロッパ。その原点はやはり子供の頃にあります。親の仕事柄海外出張、特にヨーロッパ出張が多かったため、おみやげを買ってきてもらったり、絵葉書を送ってもらったり、写真を見せてもらったり、など、こうしたやりとりを通して自然と興味が湧いていったのが、ヨーロッパへの関心が強い理由のひとつ。
ヨーロッパの文化といってもいろいろありますが、やはり代表例は音楽と美術ではないでしょうか。特に僕の場合は美術への関心が強かったです。旅行先でもできるだけ美術館を訪れたいと思うのはこうした背景があるからです。
ベルギーとフランス国境に近い場所に位置する「デルヴォー美術館」
今回最初に訪れた美術館は、ベルギーを代表するシュルレアリストのひとり「ポール・デルヴォー」の美術館「デルヴォー財団美術館」です。ベルギー西部、フランスとの国境に近いベルギー南西部「サン・イーデルバルト(Saint-Idelbald)」という小さな町の普通の住宅街にある美術館です。
場所はこのあたり。
1,000展以上ものデルヴォー作品を抱えているところは世界でもここだけです。
(http://www.delvauxmuseum.com のスクリーンショットから)
あまりにも住宅地過ぎて本当にここに世界的に有名な美術館があるのかと疑ってしまいましたが、もっともそういう美術館はフランスでも珍しくはないような気もしました。
どうやらここを曲がったところに美術館があるみたいです。
ありました!
しかし今の時代は本当に便利、とりあえずGoogleマップを信じて移動すればほぼ間違いなく目的地に到着できる。確かにマップが示した場所に美術館はありました。
美術館内は撮影禁止、作品は大充実
美しい一軒家の中へ、受付には年配の女性が。英語で話しかけられましたが「フランス語のパンフレットがほしい。今フランス語を勉強している」と伝えたところ、とても嬉しそうに「まあ、日本人はみんな英語だからフランス語で嬉しいわ」と少々テンション高めの対応をされました。が、その後流暢にあれこれ話しかけてきて、正直理解できず困りました笑。ちなみにこれがそのときもらったパンフレット。
以下、美術館の雰囲気を伝えつつ、拙いながらもデルヴォーについての解説、いや自分で理解したことを綴ってみます。デルヴォーに関しては以下のサイトおよび現地でいただいた上記パンフレットの内容をもとに自分なりにまとめています。
サン・イーデルバルトが位置するのは、フランス国境沿いにかなり近い大西洋に面する、よく日もあたる明るいエリアです。小さい頃、デルヴォーはこの地域でよく家族でヴァカンスシーズンを過ごしたようです。こうした理由もあったデルヴォーはこの地域が非常に気に入っていました。
こうした背景もあり、デルヴォーは1952年、サン・イーデルバルの街にある風車の近くに小さな自宅兼アトリエを造りました。1982年なると彼の甥から美術館建設の具体的なアイデアが出され、古いホテル・レストランを購入、これが「ポール・デルヴォー美術館」というわけです。s
さてさて、彼はもともと建築家になりたかったようですが、数学があまりできなかったため建築学校に入れなかったそうです。しかし、絵の才能がありました。デルヴォーの風景画が宮廷風景画家のフランツ・クルテンス(Frans Courtens)とアルフレッド・バスティアン(Alfred Bastien)の目にとまり、彼らはデルヴォーに美術学校で勉強するよう説得、そして彼自身もついに決意し、1920年にブリュッセルの王立美術アカデミーに入学し本格的に絵画を勉強し始めました。
とはいえ初期の頃は風景画など写実主義的な絵が中心、このころの作品は地図A1の部屋で見ることができます。デッサンなども豊富。この美術館には、デルヴォーの各時代の作品が多く揃っており、それらを時代順に展示してあるところが非常に良い点です。
(http://www.delvauxmuseum.com のスクリーンショットから)
さて、美術学校時代、彼の教師は象徴主義的な画家でしたが、彼はむしろポスト印象派や表現主義の絵、特にジェームス・アンソールに感銘を受けました。その後、1934年、エルンストやダリ、マグリット、キリコの作品が展示された「ミノトール展」でシュールレアリスムに傾倒するようになったということです。
(http://www.delvauxmuseum.com のスクリーンショットから)
なお、デルヴォーは電車好きでも有名でした。確かによくデルヴォー作品には駅や電車のモチーフが登場します。なお、この美術館には彼がコレクションしていた鉄道模型も数多く展示されていました。以下の写真のようなかたちで展示されています。これは彼の自作なのかな?思った以上に見ごたえがありました。
(http://www.delvauxmuseum.com のスクリーンショットから)
あわせて美術館では彼の所有品の展示もありました。一部、骨格模型など彼の絵画のモチーフに用いられたものもありました。
ちなみに、彼の作品の中には古代ギリシャ、古代ローマ時代の建築物が数多く登場しますが、それは彼が若い頃にギリシャ・ラテンの古典に関する学位を取得したこと、そして建築の勉強もしていたことに起因するそうです。
(http://www.delvauxmuseum.com のスクリーンショットから)
ひととおり鑑賞を終えて外へ。美術館の中にはカフェレストランが、ちょうどお昼になったときで多くの人、といっても小さな施設なので高々数組、の観光客で賑わっていました。中庭もとてもきれいでした。小さな美術館ですし、場所もブリュッセルなどからは遠いので訪れづらい場所ではありますが、わざわざ訪れる価値は十分にある美術館だと思いました。