ル・コルビュジェ建築巡り スイス編その2「ヴィッラ・ル・ラック(Villa Le Lac)」、2017年9月スイス・フランス旅行記 No.9

2017年9月スイス・フランス
2017年9月スイス・フランス

訪問日時:2017年9月16日

スイスのル・コルビュジエ建築巡り第二弾。スイス・フランス語圏のレマン湖北東の湖岸にもル・コルビュジエ建築があります。「ヴィッラ・ル・ラック(Villa Le Lac)」です。東にはヴヴェイの街、世界的企業ネスレのお膝元。また、西にはローザンヌの街が。なお、このあたりはラヴォー地区といって、スイスでも有数のワインの産地で、その見事なぶどう畑の景色から世界遺産にも選ばれているエリアでもあります。

なお、近くにはサン・サフォランという美しい村があります。

美しい村はこちら:Saint-Saphorin(サン・サフォラン)スイスの最も美しい村巡り No.17 ★★★★★

メゾン・ブランシュ同様、開館時間は限られていました。僕は2017年9月16日に訪問しました。ネット等でしっかりと下調べをしておいたので大丈夫でした。というのはここはアクセスもよく、美しい村巡りのルートとも相性がよかったため、出発前から訪れようと決めていたからです。

駐車は少々苦労しましたが、東側100メートルほど離れた場所に無料のスペースがあったのでそちらを利用させてもらいました。程々混んでました。

その駐車場から徒歩でヴィッラ・ル・ラックへ。ここも前回ご紹介の通り中へ入るためにはブザー等で連絡しなければなりません。ただ別の観光客のグループと一緒に到着したので、その方とともに特段何もせず普通に入ることができました。きゃぴきゃぴした元気のいい女性が学芸員の方で、この方に入場料等を支払います。荷物はこちらのロッカーにおいて内部及び庭を見学することができます。

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ちなみに現金のみの支払い。ちょうど10スイスフランを渡したとき、「実は10スイスフランにはル・コルビュジエが描かれているのよ」と係りの女性に教えていただきました。私、恥ずかしながらこのときはル・コルビュジエはフランス人だと思っていたのでびっくりしました。ちなみに時系列が逆なのですが、前回ご紹介の「メゾン・ブランシュ(Maison Blanche)」はこの翌日の17日に訪問したのですが、ここであらためてル・コルビュジエがスイス出身だったことを知ることになったわけです。

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前回の記事:ル・コルビュジェ建築巡り スイス編その1「メゾン・ブランシュ(Maison Blanche)」、2017年9月スイス・フランス旅行記 No.8

さて、ヴィッラ・ル・ラックは、ラ・ショー=ド=フォンのメゾン・ブランシュとはいろいろと対照的だとも言えます。第一に、メゾン・ブランシュは独自の協会が所有・管理を行っている一方、ヴィッラ・ル・ラックはパリにあるル・コルビュジエ協会(La Fondation Le Corbusier Paris)が所有・管理しているということです。第二に、メゾン・ブランシュは最終的に世界遺産の資産リストに登録されなかったのですが、こちらのヴィッラ・ル・ラックはれっきとした世界遺産認定資産となっております。

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ヴィッラ・ル・ラックは1920年に設計・建築されました。ル・コルビュジエ作品の中では初期の作品にあたるのですが、すでに後に確立する「新しい建築の5つの要点(les cinq points d’une architecture nouvelle)」の主たる要素が実現されています。ある意味彼の今後の建築哲学の原点ともいえるものだったのです。これがヴィッラ・ル・ラックが資産リストに認定された大きな理由となっています。 主だった特徴としては、現地でいただいたパンフレットには次のように書かれていまして、それをとりあえずそのまま記載(勝手な意訳)をつけて掲げておきます。解釈が難しい…。

  1. 人間的な尺度の追求(la recherche de l’échelle humaine)
  2. 規模(la proportion)
  3. コンクリートの構造の恩恵による自由な設計(le plan livre grâce à la structure en béton armé)
  4. 向き(l’orientation)
  5. 長い窓(la fenêtre en longueur)
  6. 屋上庭園(le toit-jardin auquel on accède par l’extérieur)

ミニマムな生活の追求(la recherche de l’habitat minimum) 小さいパンフレットながら内容は充実しています。私は勉強のためにフランス語版をもらいましたが、おそらく英語版もあったはずです。

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建築に関してまったくの素人ながらの解釈とはなりますが、「人間的な尺度の追求」「ミニマムな生活の追求(la recherche de l’habitat minimum)」はとてもわかりやすいです。「規模(la proportion)」もこの部類に含まれるか、とにかくシンプルで華美な装飾がとことん排除されているのです。見た目ですぐわかります。本当にこれで暮らしていけるのかと思ってしまうくらい。でも100年近く前に建てられたものなのに非常に現代的な雰囲気がします。

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わかりやすいところでは「長い窓(la fenêtre en longueur)」。これはサロンにあるこの長い窓で全長11メートル。とても長いためレマン湖やアルプスの壮大な光景を見渡すことが可能です。

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サロンに隣接する小さなサロンは客間的な利用をしたそうです。敷居となる壁が可動式になっているとのことです。とても質素です。

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庭にはこのプティサロンから出ることができます。

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サロンの奥、プティサロンの反対側は住居人の寝室、なのですが、現在は執務室のようでした。さらに奥には、風呂場、貯蔵庫、台所などがあります。

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2階もありそこにもベッドが置いてありました。

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地下にも貯蔵庫が。ワインなどをおいていたようです。

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外部は、とその前に屋上庭園を。これは見たとおりですね。これもミニマム、規模等を考慮したひとつの解決方法ということなのでしょう。訪れたとき天候は悪かったのですが、ここから眺める景色は最高です。ここへ行くには一旦外へ出て階段を上がる必要があったか。忘れてしまいました。

Villa Le Lac 16092017-_MG_4971-yuukoma 一方のプティサロンから出ることができる外の小さな庭、これは10メートルほど、確かに小さな庭でどちらかというと外にある緑の部屋といったところでしょうか。レマン湖が目の前だし正面(南側になります)には壮大なアルプスの景色。 Villa Le Lac 16092017-_MG_4956-yuukoma

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このヴィッラは彼の両親のために建てられたということです。完成してしばらくたった1924年、ル・コルビュジエの両親がこのヴィッラに移り住みました。しかし、父親のGeorges Edouard Janneret は翌年亡くなられたためわずか1年しかここに住むことはできませんでした。一方の母親であるMarie Charlotte Amélie Jeannetre-Perret は、100歳になる1960年まで住んでいたそうです。最終的にはル・コルビュジェの兄が1973年まで住んだということです。

なお、定期的にこの施設を利用して現代の画家のエクスポジションを行っているようです。このとき内部に展示されているのはAdrien Couvratという方の作品でした。(すみません、まったく知らないです…)

僕にとって建築はまだまだ未知の領域です。ただ少なからず現在では当たり前の様式を始めに打ち出したのがル・コルビュジエ含むモダン建築の巨匠と呼ばれる人たちだった、という理解は間違えていないと思っております。

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