訪問日時:2017年9月17日
今回の旅行ではスイスとフランスにあるル・コルビュジェの建築巡りを行いました。スイスは2箇所、フランスも2箇所です。絵画鑑賞は昔から好きで、そもそもヨーロッパを多く旅行している主たる理由のひとつになっているのですが、正直なところ建築に関して興味を持つようになったのはここ最近のこと。ということで建築に関する知識は皆無です。
ル・コルビュジェのことを知ったのは恥ずかしながら2016年に世界遺産に選ばれたときです。このとき偶然フランスを旅行中で、滞在していたブルゴーニュからフランシュ・コンテにあるル・コルビュジェの晩年の傑作「ロンシャンの礼拝堂」まで2時間で行くことが判明し、予定を急遽変更(追加)して訪れたのでした。
それから1年。今回の旅行を計画する際、レマン湖沿いにル・コルビュジェの建築があることを知り、美しい村巡りのルート上も非常に訪問しやすい場所に位置していたため、事前に訪問することを計画していました。ところが、前回ご紹介した世界遺産の街「ラ・ショー=ド=フォン」がル・コルビュジェが生まれ故郷であることを知り、ここにもコルビュジェ建築があることがわかり、スイス内では合計2箇所の訪問をしたことになりました。
さて、ル・コルビュジェ建築を鑑賞するにあたり、いずれの施設も以下のような共通点があったのが印象的でした。
1. 開館日時が非常に限られていることが多い。週に2回ないし3回、開いていても午後のみとか。
2. 施設内へ入るときは施設の入り口でノックするなりブザーを鳴らすなりして入る必要がある
3. 明確なチケット購入の窓口はなく、学芸員と思われる係員がいて、入場料等はその方に支払う
4. 英語もあるが学芸員の解説は多くはフランス語
特に入る際、ブザーを鳴らす、ノックをするというのがはじめ戸惑うところでもありました。
訪問順序は逆ですが今回ご紹介するのは、ラ・ショー=ド=フォンにある「メゾンブランシュ(Maison Blanche)」です。ル・コルビュジェの両親のために1912年に設計した別荘で、独立した建築家としてのデビュー作だったそうです。1979年にスイスの国定資産となり、そして2000年にはメゾン・ブランシュ協会(l’Association Masion Blanche)が誕生。一般公開は2005年から行っています。
街の北側のちょうど街全体を一望できる高台にあります。まわりは静かな住宅地ですが、近くにはいくつか訪問者用の駐車スペースがありました。 さてこのメゾン・ブランシュ、開館しているのは金、土、日の10時から。旅行者ではまずありえないと思いますがハイヒールダメだそうです。
お庭を通って建物の入口へ。
建物内には前述の通りノック(金属のノックするものがあった)して中の人に開けてもらって入ることができます。 当時地元の建築様式で主流だったアール・ヌーヴォー調とは一線を画す「新古典主義」的な様式でデザインされたということだそうです。という解説がところどころでなされているのですが、正直なところ建築についてはほとんど知識がないのでよくわかりません。なお、まだこの頃は「近代建築の5原則」が確立する前段階だったということもあり、実はこのメゾンブランシュは、世界遺産「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献」における構成資産には選ばれておりません。候補にはなったようです。
さて内部はというと、建物自体は全部で2階建て。 建物の1階(フランス語で Le rez-de-chaussée)は9つの部屋から構成されています。
- Chambre à manger (食堂)
- Salon (応接間)
- Antichambre(控えの間)
- Petit salon(小さな応接間)
- Bibliothèque(書棚)
- Office/Cuisine(執務室、台所)
- Vestibule(玄関)
- Garde-robe(クローゼット)
- Entrée(入り口)
まず中央にSalonが、その正面奥にChambre à manger (食堂)があります。Salonにはピアノが展示されています。ル・コルビュジェの母親はピアノ教師だったそうです。
暖炉はサロンのどの向きにあったかなあ。忘れてしまいました。
Antichambre(控えの間)にはいろいろなパンフレットが置いてあります。
なお、写真にはないですがこの奥にあるBibliothèque(書棚)が現役のオフィスになっていてここに係員がいまして入場料を支払います。
Petit Salonは食堂の左隣、サロンの右奥にあります。ひとり用のソファーが展示されています。とても落ち着いたスペースで個人的には大変気に入りました。
Office/Cuisine(執務室、台所)は、ほぼ台所のような気がします。チェック柄の床が美しい。
玄関と階段の様子。入り口の写真は取り忘れてしまいました。
続いて建物の2階(L’Étage)の構造です。
- Chambre (de Charles-Édouard Jeanneret)(ル・コルビュジェの寝室)
- Lingrie(衣類整理室)
- Chambre è coucher (des parents)(両親の寝室)
- Toilette(cet espace deviendra une loggia)
- Chambre (devenue salle de bain)(寝室、のちにお風呂場)
- Atelier (de Charles-Édouard Jeanneret)(ル・コルビュジェのアトリエ)
Chambre (de Charles-Édouard Jeanneret)(ル・コルビュジェの寝室)とありますが、ここは以下のように椅子、ソファーが展示してありました。
Chambre è coucher (des parents)(両親の寝室)もベッド等の展示はなく大きな立派なデスクが展示してありました。
上の写真の奥にある小さな一角はかつてToilette(トイレ)だったようですが、現在は小さな普通の部屋となっていました。
ちなみにトイレは2階の階段あがってすぐのところにあるのですが、一般客は使用禁止でクローズされていました。
それ以外の部屋の写真は残っていませんでした。6番のAtelierの写真がなぜないのかが思い出せません。もともと鑑賞できなかったのかな?
ちなみに面白いなあと思ったのが、このMaison Blanche で入手した資料やラ・ショー=ド=フォンの観光案内所で入手した資料では、ル・コルビュジェではなく、彼の本名「シャルル=エドゥアール・ジャヌレ(Charles-Édouard Jeanneret)」がよく使われていることです。生まれ故郷だからなのでしょうか。
なお、ラ・ショー=ド=フォン市内には、ル・コルビュジェが当時使用していた事務所やその他の彼の設計した建築もあります。パンフレットは市内の観光案内所でもらえます。
事務所は外観のみの鑑賞、またVilla turqueは、パンフレットを見るとヌーシャテルの観光案内所にコンタクトを取れば見学できるようですね。
(その2へと続く)