訪問日時:2016年7月21日、正午頃
ちょうど旅行中に世界遺産になったばかりの名所
予定を持て余していた21日、この日の朝はディジョンにいました。ブルゴーニュ公国の都だったところです。前日はちょうど直前の投稿でご紹介したとおり、コート・ド・ボーヌをドライブしていました。前日までで予定していたブルゴーニュ観光は完了し、この日からお隣のフランシュ・コンテへと入ることになっていましたが、正直、グルメの宝庫とはいえ観光どころは多くなく、アルケスナンの製塩所あるいは美しい村巡りなどはもう何年も前に訪れているので、することがなくて困っていたのです。
しかし、ちょうどこの旅行中に、[highlight]ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-[/highlight]が世界遺産に認定されたというニュースが流れてきました。なにか近くに関連施設がないかとネットで調べていたところ、比較的クルマで行ける範囲に一箇所ありました。
それがロンシャン「ノートルダム=デュ=オー礼拝堂」です。
ちょうどこの21日に宿泊予定の地は、アルボワ(ミシュラン2つ星のオーベルジュがあったところです)といって、同じフランシュ・コンテ地域圏のジュラ県にある街です。その同じ地域県内のロンシャンというところにル・コルビュジエが設計した有名な礼拝堂があることがわかりました。
しかし同じフランシュ・コンテ地域圏内といっても、アルボワの街はフランシュ・コンテのほぼ西端に位置しているのに対し、ロンシャンは反対側のほぼ東端、ブザンソンのさらに北東側です。東隣りに位置するアルザス地方にとても近い場所にあります。ドイツやスイスも1時間ほどで十分行ける範囲です。
ディジョンからはクルマで2時間ほどとはいえ、その後、再び同じ道を引き返してアルボワへと戻るのはなんとも効率が悪い。ということではじめは行くのを躊躇していましたが、時間を持て余せいてももったいないので、思い切って行ってみることにしました。
近代建築と「ル・コルビュジエ」について
さて今回認定されたのは、[highlight]ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-[/highlight]というタイトルの世界遺産です。東京の上野にある西洋美術館も登録対象となっていたことから話題になりましたね。
まだこの訪問時はいまいちル・コルビュジエをはじめとした20世紀頃からの近代建築についての理解、知識がほとんどありませんでした。しかし、この旅行あと11月にパリに行った時、同時代に活躍したバウハウスの創始者でもあるグロピウスについて勉強する機会があったので、今、あらためてこのブログを書きながらその貢献について学んでみました。といっても上記雑誌を斜めした程度、それでも、近代建築の5原則 (Cinq points de l'architecture moderne)(「ピロティ(les pilotis)」、「屋上庭園(le toit-terrasse)」、「自由な平面 (le plan libre)」、「水平横長の窓 (la fenêtre en bandeau)」、「自由なファサード (la façade libre)」)などをにわかとはいえ理解することができたと思います。
特に、「水平横長の窓」、そして5原則にはありませんが、大量生産目的で標準化された鉄筋コンクリート製の床と柱と階段だけの構造システム=「ドミノシステム」などは特にグロピウスが創始したバウハウスの概念とも共通することがわかります。
こうして少し知識がついてくると、なるほど、ぱっと見てシンプルな「サヴォア邸」がなぜル・コルビュジエの最高傑作の一つのなのか理解できるような気がします。今度行ってみようと思います。
ところで、近代建築に関しての世界遺産といえば、同じく7月に行った「ル・アーブル」、こちらはオーギュスト・ペレが再建した計画都市。実はル・コルビュジエは彼の弟子だったそうです。オーギュスト・ペレ以前は鉄筋コンクリートによる建築物はなかったようです。今や当たり前の建築の考え方は、ペレやコルビジェといった人たちが切り開いたということを改めて実感することが出来ました。バウハウスの活動などもまさにそうですね。
ル・アーブル、バウハウスなどを簡単とは言え一通り勉強してみると、ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-がどうして世界遺産に選ばれたのかがよくわかります。
脱線しますが、近代建築関連の世界遺産として最近「ブラジリア」が気になってきました。
なお、こちら非常にいい特集です。今回の投稿を書く上で大変参考にさせてもらいました。
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ル・コルビュジエファンはゼッタイに持っておくべき一冊と言えるでしょう。ちなみにKindleにもありました。僕はKindle版を購入しました。
2時間かけてロンシャンへ
さて、話を戻します。相変わらず前置きが長くてすみません。ディジョンを朝9時過ぎに出発してロンシャンへ向けて高速道路に沿って飛ばし、その後は一般道で目的地へ。高速を降りてからの道のりが意外と長かったです。結局、高速1時間、一般道1時間弱だったでしょうか。もっとも渋滞は無いのでほぼノンストップで向かうことができました。
ロンシャンの街に到着後、県道から細い脇道に入りそこから1分くらい坂を登った丘の上に礼拝堂はあります。十分な広さの駐車場(もちろん無料)があったのでそこに停めました。
他の車は5台ほどあったでしょうか。残念ながら日陰・木陰の場所は埋まっていたので、思いっきり直射日光が当たるところとなってしまいました。出発時は雨が降っていましたが到着直前に空が晴れてきました。
そしてこちらが施設の入り口となります。ここでチケットを買って中に入ります。ル・コルビュジエが設計、したわけではないようですが、近代建築の要素を十分に感じる設計のような気がします。
入り口でパンフレットをもらって観光開始です。パンフレットはフランス語英語の併記のものを1部もらえます。
ロンシャンの礼拝堂、外からの眺め
エントランスの建物をくぐり、丘へ、その丘の一番高いところに、ロンシャンの礼拝堂があります。
このロンシャンの礼拝堂は正式名称で言いますと「ノートルダム=デュ=オー礼拝堂 (Chappelle Notre-Dame du Haut, Ronchamp)」と言います。これはル・コルビュジエ後期の作品です。第二次世界大戦の爆撃で破壊されてしまった礼拝堂を、ル・コルビュジエによって終戦後に新しく立て直したということです。上のパンフレットの地図では4番の場所に位置しています。ちょうどパンフの地図の2番の建物の横辺りがよい写真撮影ポイントとなっていました。
この礼拝堂は見る角度によりずいぶんと印象が変わるのが面白い点です。
しかし、さきほどにわかに学習した「近代建築の5原則」とこの礼拝堂を照らし合わせると「ピロティ(les pilotis)」、「水平横長の窓 (la fenêtre en bandeau)」は明らかにないことが素人の僕でもわかります。しかし、これが逆に魅力的に映るのかもしれません。
ロンシャンの礼拝堂、内部の眺め
続いては内部の様子をご紹介します。中央の礼拝堂は思った以上に広かったイメージでした。
内部の椅子は伝統的な教会、礼拝堂、カテドラルと比較するとひかくてきゆったりしているように感じました。
清潔感ある祭壇。とはいえ白主体の祭壇はよく見かけるような気がします。
天窓から注ぐ光とのコントラストがとても美しい小礼拝堂。
こちらはル・コルビュジエの絵が書かれたドア、回転式になっています。普段は閉まっています。
その他の施設の建物など
この教会のある施設には他にもいくつかの建築物があります。
上の写真はパンフの地図の5番「平和のピラミッド(Pyramide de la paix)」の上から撮影したものです。平和のピラミッドは普通に登ることができました。
次の写真の鐘(Campanile)は1975年にできたもので、ル・コルビュジエではなくジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé)の作品ということです。
そして最後に紹介するのは地図8番の「シスターのための礼拝堂」、ここはすべての人に開放されている、とパフレットに書いてありました。
こちらも造られたのが2011年と比較的最近ですから、ル・コルビュジエの作ではないようです。ル・コルビュジエの礼拝堂を中心に彼の死語、また別の才能ある建築家が施設に建物を加えていったということです。
鑑賞はこれでひととおり完了。ゆっくり見ても1時間ちょっとだったと思います。
エントランスのはいろいろな展示
ところでエントランスの建物内の展示もとてもおもしろかったです。まず入ってすぐのところに施設全体の模型があり、それを囲むように説明書きのパネルがあります。
それぞれのパネルには、今回世界遺産に登録された17箇所の建物の位置を示した地図、そして世界遺産に選ばれた理由の説明がされていました。
別のコーナーにはル・コルビュジエが設計し実現した建物のリストもありました。
ちなみに日本にもル・コルビュジエの設計した建築があります。上野にある国立西洋美術館です。
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ただしここは確かにル・コルビュジエが設計に関与したということですが、実際に造る際には彼の日本人の弟子が中心となったそうで、ル・コルビュジエ自身は1度しか訪問したことはなかったようです。それでもル・コルビュジエのコンセプトを十分に感じられる建築だと思います。
しかし、ル・コルビュジエの建築が世界遺産に登録されるまでは、面白い建物だなあくらいしか思っていませんでした。もちろん先入観なく直感のなすがままに感じることは重要ですが、それでもなおà芸術鑑賞において、知識ってやっぱり大事だなあと思った次第です。
長いこと上野には行っていないので、機会をつくって訪れてみたいですね。
このル・コルビュジエの作品への訪問をきっかけにまた少し新しい知識、教養がついたと思います。今後も観光を通して楽しみながらいろいろなことを学び続けていきたいですね。(続く)